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透明人間やめた

 
自己嫌悪しても、
殺したくなっても、
手首がボロボロでも、
何を言われても、
自分のことを絶対に嫌いにならない。
自分のことを絶対に諦めない。
自分の中にある気持ちをなかったことにしない。
本当は何もなかったことにして見過ごせたらいいけど
何もなかったことになんかしない。
わたしは自分がいなかったことになんかしない。
 
 
わたしの思う前向きは、いつも健全でいることなんかじゃないんだよ。
わたしの中にある前に進むことは、愛されるような正しいことだけじゃないんだよ。
 
 
近道の便利さに惑わされない。
便利さのための嘘はつかない。
だってそれはとても楽だったから。
そして何も満たされなかったし何も残らなかった。
自分をいなかったことにしない。
生きてきた自分をいなかったことにしない。
 
 
話を合わせることは簡単にできてしまう、
だけど続かない。
どうせ続かないんだから、もうやめた。
透明人間になるのをやめた。
 
 
自己嫌悪しても、
殺したくなっても、
手首がボロボロでも、
何を言われても、
家族を愛せなくても、
学校に友達がいなくても、
自分のことを絶対に嫌いにならない。
自分のことを絶対に諦めない。
中途半端でも、
からまわりしても、
人づきあいが下手でも、
会話が続かなくても、
やめない、
自分をいなかったことにしない。
生きてきた自分をいなかったことにしない。
 
 
わたしはクラスにいなかった人間じゃない
わたしは学校にいなかった人間じゃない
透明人間じゃない
あなたはいなかった人じゃない
あなたは家族の中でいなかった人じゃない
そこにいるよ
あなたはいなかった人じゃない
あなたがここにいる事実だ
あなたはいなかった人じゃない
 
 
わたしにはあなたが今座っていることが確かに見える
確かに見えてる
いなかったら見えない
あなたがいなかったら見えない
だけど見える
 
 
あなたがそこにいるから
わたしはあなたが見える
 
 
夕方に起きて、
今日出かけるかどうか迷って、
服を着替えてそれでもまだ迷って
靴を履いて家を出てから不安になって
ごはんは食べて行けばいいのか迷って
新宿の雑踏を歩いてここに来て
入り口のドアを開ければいいのか外で待っていればいいのか迷って
ワンドリンク頼むってなんだろうって不安になったあなたが見える
ワンドリンクは店員さんを見つめていれば気付いてくれるから頼めるよ
もしくはカウンターに行って注文ができるよ
開演までの一時間座って何をしたらいいんだろうって迷って
知り合いがいて楽しそうにしている人ばかりに見えて
自分以外みんな楽しそうに見えたあなたが見える
 
 
そんなあなたがわたしは、見えるよ
あなたはいなかった人じゃないよ
あなたはすがたかたちがちゃんとあって
ちゃんとみんなからも存在が見えている
いなかった人じゃないよ
 
 
あなたに、
人間のドロドロしたものが見えたから、
努力の中のポジティブなんてかっこいいものじゃなくて
醜い葛藤やかっこ悪い涙や
わたしと同じような恨み節が見えたから
だからあなたに感動したんです。
だからあなたに共感したんです。
不登校で手首を切って家出して倒れて運ばれて入院してして仕事をやめて切腹して警官にかこまれて、そんなひとたちがやってるイベントで休日を過ごすなんていう
どうしようもない選択をしちゃった、あなたの姿に、共感したんです。
胸の中にこみあげるものがあったんです。
 
 
自己嫌悪しても、
殺したくなっても、
手首がボロボロでも、
何を言われても、
家族を愛せなくても、
学校に友達がいなくても、
自分のことを絶対に嫌いにならない。
自分のことを絶対に諦めない。
中途半端でも、
からまわりしても、
人づきあいが下手でも、
会話が続かなくても、
やめない、
自分をいなかったことにしない。
生きてきた自分をいなかったことにしない。
 
 
朗読は、パンクロックです。
中指を立てない、誰も殺さない、何もぶちこわさない、
左手のマイクと、右手の赤い紙が
わたしにとっての精一杯のパンクです。
震える足を晒しながら許容を訴えるりょうさんのパンクです。
自分を保ったり失ったりしながら筆でカラフルを塗りつけるトキンちゃんのパンクです。
そしてあなたがここにたどり着いてくださった、事実です。
あなたの奇跡みたいな事実です。
 
 
人間が生きている姿こそ
叫んでいる姿に思える。
あなたの姿も、きっとそうだ!
あなたの姿も!あなたの姿も!きっとそうだよ!!!!
 
 
心の中には
自分で転がせない石がありました。
ずっと昔から大きな石がありました。
何度も何度も体当たりしてもびくともしない石がありました。
でもそれは誰かが必死に生きてる無様でかっこわるい姿を眺めていたら、
途端にコロコロと転がり始めたんだ。
わたしはそれがどこに転がっていくのが追いかけていまここにいる。
なんの意味もないかもしれない言葉を書き、
なんの意味もないかもしれない朗読会をしている。
 
 
隠していて忘れたいこと、
苦しくて捨ててきたいこと、
置いていきたいこと捨てたいこと、
笑ったら許せた。
全部なにも認められないけど
笑ったら許せた。
 
 
自己嫌悪しても、
殺したくなっても、
手首がボロボロでも、
何を言われても、
家族を愛せなくても、
学校に友達がいなくても、
キモいって言われても、
自分のことを絶対に諦めない。
 
 
あなたは南条あやじゃない
わたしは南条あやじゃない
だから死なない
卒業式まで死なないし
卒業式が過ぎても死ななかった。
 
 
あなたは南条あやじゃない
あなたねこぢるじゃない
あなたは山田花子じゃない。
‥みんな大好きだったよ。
でもわたしは生きてる。
でもあなたは生きてる。
 
 
あなたはいなかった人じゃない。
だからどうか現実がいつもほんとうにリアルなものでありますように。
死ななくても、生きている実感がちゃんと手のひらにありますように。
手首を切らなくても、生きている実感が
大量服薬しなくても、生きている実感が
人を傷つけなくても、生きている実感が
ちゃんと、ちゃんとあなたの中にありますように。
 
 
よし、まだいけるぞ。
すれ違う人がそう思っている気がした。
 
 
だから、わたしも、
そう思ってるよ。
 
 
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