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むだい

 

これから 独りごとのふりをして あなたに話しかけます  
さっきすれ違った人の柔軟剤の匂いが  
家族の象徴みたいな気がして 泣きたかったから 
あなたに話しかけます  
 
いくつかの駅に残してきた思い出のこと わたしはたぶん忘れないよ  
忘れていくことだっていうのを忘れないよ でも、たぶんだけど  
 
あなたの その中になにか広がっている  
切り裂けば雲が浮かんでいると思っている  
今でもだよ 今でもそう思っていたい  
ということは信じてなんか いないよね 
思いたがっている だけだよね  
 
だってねぇ 心はワンルームサイズだったんだ  
ねえ信じられる? 
聞くところによるとね そこで全ての営みが行われるらしいよ  
 
これから 独りごとのふりをして あなたに話しかけます  
さっきすれ違った人の柔軟剤の匂いが  
家族の象徴みたいな気がして 泣きたかったから  
 
あいつらがくだらないって言った  
小さな存在を拾い集めていようね  
そもそも大きな存在なんてないし  
みんな同じって気づかせるまで 淡々とずっと拾い集め続けよう  
 
個性的であれなんていうばかな幻想は  
わたしが全部ふきとばしておくからね  
こうして同じでいよう  
生きたいって思う同じでいようね  
 
こうして  
言葉を踏み荒らされないように  
ゆびきりした小指を突き立てる  
 
さっきすれ違った人の柔軟剤の匂いが   
家族の象徴みたいな気がして 泣きたかったから  
あなたに話しかけます 
だから あなたに話しかけます  
 
ほんとうのことは ときどきしか言わないけど  
これはもしかしたら 多分 全部 ほんとうかも  
 
 
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