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くそくらえのハンドサイン

 
考えてくれ 
生きてることを 
考えてくれよ 
命のことを 
考えてくれ 
誰にも心があることを 
考えてくれ 
誰もが傷つくことを 
考えてくれ 
死ぬことを 
考えてくれ 
人が死んでしまうことを 
考えてくれ 
人がいなくなってしまうことを 
考えてくれ 
もっと 
もっともっともっと 
もっともっともっともっと 
気づいてくれ 
 
「寂しい」は 
埋めるとさらに「寂しい」が倍増するから、 
このままどこまでも連れていこうよ 
 
解消すると、解消する前より増えるものって 
感情でたくさんあるし 
埋めると、埋める前より空っぽになることって 
感情でたくさんあるし 
わたしは、そういうことを全部言葉にして読み捨てたい 
 
ピーマンもゴーヤも大好きだけど 
寂しい苦味なんて笑えないんだよ 
噛み砕いても噛み砕いても 
寂しい苦味なんて笑えないままなんだよ 
 
大阪のドヤ街の屋上で 
大好きなその街を眺めながら話をしていたら 
年末年始を生き抜くための越冬闘争の日に 
フリーライブを見ながら 
あべのハルカスに中指を突き立てていたおっちゃんがいた 
と聞いて 
想像だけでもフォトジェニックすぎてグッときた 
 
日本一のスラム街と呼ばれることもある街のどこからも 
見える300mのあの超高層ビル 
そこに登ったらここにいるわたしたちのことなんて 
見落とされるんだろ? 
 
わたしは中指をたてたことがない 
でもなぜ中指なんだろうと思ってウィキペティアを見たら 
昔は「鳥をすばやく投げる」という意味であった 
と書かれていた 
 
だからわたしは「鳥をすばやく投げる」という意味ということにして 
言葉で中指をたてようと思う 
 
死ねって言うな 
簡単に死ねって言うな 
命に向かって死ねって言うな 
 
でも死にたいって言わせて 
死なないためにこまめに愚痴らせて 
わたしが死にたいと思った今日は 
誰かが生きたいと思った今日なんて 
そんなことわかってるんだよ 
そんなこと・・わかってるんだよ 
 
だけど心がたまに死にたくなるんだ 
死なないから笑ってこぼさせてくれ 
 
考えてくれ 
生きてることを 
考えてくれよ 
命のことを 
考えてくれ 
誰にも心があることを 
考えてくれ 
誰もが傷つくことを 
考えてくれ 
死ぬことを 
考えてくれ 
人が死んでしまうことを 
考えてくれ 
人がいなくなってしまうことを 
考えてくれ 
もっと 
もっともっともっと 
もっともっともっともっと 
気づいてくれ 
 
自分以外のひとが超すごくて 
なにもかもスーパー鉄人な気持ちがして 
どれだけがんばっても 
まれに思いの外がんばれたときにも 
自分から見た他人の平均値にも届かない気がするけど 
 
他人も劣等感を持っていることがあるのを 
忘れないでいることは難しい 
 
劣等感はわたしだけのものじゃない 
劣等感はあなただけのものじゃないよ 
こんなままじゃ独占禁止法にひっかかるよ 
うっかり不正取引して 
ついつい独り占めしそうになるけど 
劣等感は自分だけの中にあるわけじゃない 
ということを 
時々、思い出そうね 
 
「寂しい」は 
埋めるとさらに「寂しい」が倍増するから、 
このままどこまでも連れていこうよ 
でも永久に持ち続けていくなんて嫌だ 
だからそれを全部書きためよう 
 
言葉などすぐに消えうせるし 
何の意味にもたどりつかないということを 
わざわざ言葉で書き続けるわざわざ声に出して叫び続ける 
 
今までだって 
何度も何度も何度も 
言葉などなんの意味もないなと思ってきたし 
それを目の当たりにしてきたのに 
それでもまだ書く 
 
一番信用してない言葉を書き続けて 
わざわざそれを読むことに望みを託してる 
一番信用してないのは言葉なのに 
そしてまた新しい朗読用テキストができあがる 
 
くそくらえ言葉なんてと書きなぐる言葉を夢中で叫び続ける 
 
考えてくれ 
生きてることを 
考えてくれよ 
命のことを 
考えてくれ 
誰にも心があることを 
考えてくれ 
誰もが傷つくことを 
考えてくれ 
死ぬことを 
考えてくれ 
人が死んでしまうことを 
考えてくれ 
人がいなくなってしまうことを 
考えてくれ 
もっと 
もっともっともっと 
もっともっともっともっと 
気づいてくれ 
 
わたしは言葉で 
鳥をなげる 
 
 
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